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夢降る夜と私小説。

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「ローランサンの娘たち」 知美 -4-

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西日が胸を焦がす。綺麗に整ったベッド。ジュエルらしい。洋服もたたんである。荷物は一つにきちんとまとめられていた。あたしは、半日以上もの間、空っぽの部屋にしゃがみこんでいた。

携帯が鳴る。マスターからだ・・・。

『知美ちゃん。ジュエルがお世話になっています。ほんとにありがとう。・・・あの・・・ジュエルと何かあった?』
「え?」
『バイトを少しの間休ませて欲しいって言うから』
「そうですか・・・」
あたしは、遠まわしに朝の出来事を話した。
「・・・ごめんなさい・・・あたし・・・」
『・・・いや、知美ちゃんの昔の恋人の話をジュエルにしたのは俺だし。俺にも責任ないわけじゃない。なんか、余計な事しちゃったね。こっちこそ、ごめん・・・』

『俺、あの子なら、君とうまくやっていけるんじゃないかって思ったんだ・・・そういう出会いってさ、なかなかないから・・・。君が部屋においてくれるって聞いて、内心良かったなって・・・。面接で言ってたけど、身寄りがなくて。あの子』

『・・・君の受けた痛手は・・・相当だって分かってる・・・。あの子、真剣に考えてたよ。自分が見合う大人になろうって。水商売をしてるからって、色眼鏡で見て欲しくないって、毎日、俺から料理のレシピ聞いたりしてさ。働いて疲れてるのに。誰を好きになって誰を選ぶのかは君の自由なんだけど・・・いい子なんだ。ほんと。それだけ、言いたかったんだ』

「・・・」
ジュエルの境遇と本当の姿を知り、あたしは言葉を返すことが出来なかった・・・。

『何かあったら、また連絡します。それじゃ』


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短編「ローランサンの娘たち」
これまでのお話はこちらからどうぞ
第1話 プロローグ
第2話 知美 -1-
第3話 知美 -2-
第4話 知美 -3-
by yumefuru | 2011-05-24 13:18 | 短編 ローランサンの娘たち
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夢が届けてくれた物語。そのかけらをひろいあつめて綴ります。


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