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夢降る夜と私小説。

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僕らの永遠の夏

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夏休みが近づき、一学期最後の音楽の授業。慎司先生が期末テスト前に課題にしていたグループ発表の日が来た。曲から、楽器の選択まで、グループで自由に決めることが出来るというものだった。あたしのグループは祐介くんの提案で、一青窈の「ハナミズキ」の合奏を選んでいた。

初めの構想では、パーカッション、ベース、ギター、ピアノ、そしてクラリネットの五人編成で演奏することになっていた。パーカッションにはドラム経験のある臼居浩哉くん、ベースには木下ユキちゃん、ギターは佐藤圭一くんが、そしてクラリネットは祐介くんに決まった。あたしは選択肢もなくピアノと言われたので、たまには違う楽器を弾かせて欲しいとお願いしたけど、祐介くんは『ピアノはさくらちゃんじゃなきゃ』と言うので仕方なく了承した。そこへ、ユキちゃんが『キーボードにしたらどう? いろんな音使えるよ。私、貸してあげる』と言ってくれた。グループのみんなからもオーケーが出たので楽器編成がピアノからキーボードに変更された。

キーボードではピアノのような抑揚は出せないけれど、あたしは“ストリングス”なる音色には心が惹かれた。

みんなで少しずつ少しずつ練習し完成した「ハナミズキ」。
最後に音の花を綺麗に咲かせてあげよう・・・。

先生は発表前に少しだけ最終練習の時間をくれた。各グループにアドバイスをして回っている。圭一くんがどうしてもまだ完璧に弾けないところがあると悪がっていた。あたしは「大丈夫だよ。みんなでカバーするから!」と言って励ました。

その声に振り返り、先生が笑う。

なんだか不思議だ。パパのこと・・・。ママのこと・・・。亮のこと・・・。たくさん悩んでいたことを、この頃、あたし忘れてる・・・。



各グループの発表が始まった。息が合わずやり直しをするグループもあれば、最初と最後だけがピッタリ合うグループもあった。そして、アカペラで「アメージンググレイス」を歌うグループの後はいよいよ、あたしたちの発表の番。

楽器の準備が終わり、祐介くんのカウントで曲がスタートする。

途中の音数が減る部分も、印象的なサビのフレーズも、皆が精一杯演奏した・・・。

うまく合わないところもあったけれど、最後まで演れた。

私は鍵盤からそっと指を離す。

演奏が終わると教室から拍手が起こり、ユキちゃんはあたしの手を取って嬉しそうに笑った。

「ありがとうございました」
祐介くんがお辞儀をする。

『良かったね!』
あたしは心からそう思った。


すべてのグループの発表が終わると先生からの総評があり、授業は終了。


―― 先生が笑って、みんなが笑って、あたしは、そういうのがずっと続くと思っていた。




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これまでのお話はこちらからどうぞ
第1話 ファースト・セッション1
第2話 ファースト・セッション 2
第3話 ファースト・セッション3
第4話 音のおもかげ
第5話 朝に・・・。(1)
第6話 朝に・・・。(2)
第7話 ビターチョコレート
第8話 いつものように
第9話 面談
第10話 雨(1)
第11話 雨(2)
第12話 僕の追跡(1)
第13話 僕の追跡(2)
第14話 エンドレスのiPod
第15話 ココロノイバショ
第16話 落ちた五線譜
第17話 トワイライトメール
第18話 アンバランスハート
第19話 夕陽の部屋
by yumefuru | 2011-04-04 13:29 | 小説 STILL BLUE
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夢が届けてくれた物語。そのかけらをひろいあつめて綴ります。


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