夢降る夜と私小説。

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僕の追跡(1)

吉沢を駅で見送ったあと、コンビニで立ち読みしていた亮は、道路向かいの総合病院に入っていく慎司を見かけた。それからも度々慎司を見かけ、最初はどうでもいいと思っていたけれど、こう何度も続くと気になり出す。

病院の自動ドアの外から中を見る。慎司は5歳ぐらいの女の子と手をつなぎエレベーターの方へ向かって歩いていくところだった。

『慎司先生って結婚してんだよ』
祐介の言葉を思い出し、その女の子は先生の娘だと思った。

身を乗り出したせいか、自動ドアが開いてしまう。警備員が不信そうにこっちを見ている。

「ちっ」

しょうがなく病院に入り、とりあえず、受付の椅子に座り雑誌を手にとる。

慎司はエレベーターから降りてきた看護師と言葉を交わしていた。看護師に髪を撫でてもらい、はしゃぐ女の子。それから軽く挨拶をして二人はエレベーターに乗り、視界から消えていった。俺は急いでエレベーターの前に立って、ドラマみたいにどの階で止まるのかをチェックした。エレベーターは二階で一度、そして八階で一度止まった。そしてそのまま、上へは行かず、下へ向かっている。この病院の二階は、眼科とよくわからない名前の検査室だけ。

『八階か・・・』

「誰かさがしてるの?」

さっきの看護師だった。

「あの・・・。さっき話してた、先生・・・。成瀬先生どこか悪いんですか?」
はぁ。我ながら白白しい。

「・・・」

「先生の学校の生徒です。牧野と言いますが・・・。時々、先生がこの病院に入っていくのを見たので・・・」

『教えてくれるはずないか』

「学校の生徒さん?」

「・・・はい」

「・・・ごめんなさい。それはちょっと・・・。でも、あなたの先生の具合が悪いわけじゃないわ」

「そうですか。ありがとうございました」

「あなたも、音楽を?」

「え? ・・・吹奏楽をやってます」

「・・・そう。がんばってね」
看護師は少し悲しそうな顔をした。
by yumefuru | 2010-05-25 13:02 | 小説 STILL BLUE
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夢が届けてくれた物語。そのかけらをひろいあつめて綴ります。


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