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夢降る夜と私小説。

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雨(1)

雨の水曜。ピアノは、いつにもまして寂しげな音がした。

音楽室の下で、携帯を見ながら亮は吉沢を待っていた。今日は先生のサックスは聞こえてこない。

「お待たせ。ごめんなさい」

「そんなには」

パタンと携帯を閉じて二人傘をさして歩きだす。雨は幾分弱くなってきた。それでも植え込みの緑が跳ね上がる雨でうすく滲んで見える。運動部も今日は休みらしい。静まりかえった校舎にさくらのピアノが響く。

「亮くん。あのピアノ、さくらちゃんでしょ?」

三階の音楽室を見上げ、吉沢が聞く。だまって俺はうなずいた。

「気になったりするんじゃない?」
誘導尋問のような吉沢の一言。

「・・・別に」

「パートナー、とられちゃったね」

「やめろよ。さくらは幼馴染なだけ。誰と合わせようがあいつの自由だし。それに、先生、上手いし」

祐介も吉沢も、面倒くさい質問ばかり。
二人で並んで歩く。俺は吉沢に気づかれないように傘を傾け音楽室を見た。
by yumefuru | 2010-05-17 21:18 | 小説 STILL BLUE
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夢が届けてくれた物語。そのかけらをひろいあつめて綴ります。


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