人気ブログランキング |

夢降る夜と私小説。

yumefuru.exblog.jp ブログトップ

ファースト・セッション3

陽が傾き、二人の影も伸びてきた。
初めてのセッション。
それはあっけなく、さくらの一言で終わった。

「まずい!帰らなきゃ」

「・・・ああ。そうだな」

教官室に戻り、煙草に火をつける。
窓から外を見ながら俺はさくらに聞いた。
「クラシックは弾かないのか?」

「・・・弾くよ。でも、なんか、堅苦しいでしょ。一日ぐらいは軽いのにしたいの」

「堅苦しい?」

「もう。がちがちだもの。息がつまるの。ここは強くとか、使う指が違うとか・・・」

「はは。そうかもな」

「先生の見てる楽譜のこの記号ってなに?」

「これはコード。俺、ジャズだから。さくらも、そのうち習うと思うよ」

「ジャズ・・・」

煙草を灰皿に押し付けて火を消す。
「さあ、暗くならないうちに帰ろう。先生もここ閉めて帰るから。一人で帰れるかい?」

「はい・・・。あの・・・。先生。また、来てもいいですか?」

「ああ。気をつけて帰りなさい」

「ありがとうございます」

ドアを開け出て行こうとするさくら。
「なあ、さくら。早くまた牧野とやれるといいな」

「・・・」
うなずくでもなく、ドアを閉めるさくら。足音が消えて行った。
by yumefuru | 2010-03-13 15:10 | 小説 STILL BLUE
line

夢が届けてくれた物語。そのかけらをひろいあつめて綴ります。


by yumefuru
line
クリエイティビティを刺激するポータル homepage.excite
カレンダー
S M T W T F S
1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30