夢降る夜と私小説。

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ファースト・セッション2

教官室隣の音楽室で、グランドピアノの前に座るさくら。進学を旨とするこの高校は部活にも熱心だ。毎週水曜日、合唱部は近くの大学の音楽室で練習をする。唯一のピアノのレッスンが休みのこの日に、さくらはこの音楽室で牧野と二人音合わせをしていた。

俺はアルトサックスを選びストラップにつける。

「先生、吹けるの?」

「一応、音楽教師です。お前に合わせるから」

「じゃあ。おいていかれないようにね。先生」

そう言って、さくらはピアノを弾き始める。繊細な音。十七歳、音楽界のサラブレッドの紡ぐ音。いつも思っていた。さくらのピアノが好きだ。唯の音がする・・・。

心のままさくらの指が鍵盤の上を走って行く。それまで音と音の意味のない『間』でしかなかった寂しげな休符。その隙間をサックスでうめていく。

三曲目の途中、ふと、さくらのピアノが止まり複雑な顔をしてつぶやいた。
「なんだろう。私・・・。こんな気持ちはじめて・・・。すごく・・・。すごく・・・」

牧野からは得られることが出来なかった『何か』を言葉にできず、明らかに歯がゆさを感じているさくら。だから、俺は言ってあげた。

「相性いいな。さくらとは」
by yumefuru | 2010-03-11 14:59 | 小説 STILL BLUE
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夢が届けてくれた物語。そのかけらをひろいあつめて綴ります。


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